骨粗鬆症

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症のイメージ写真

何かしらの原因によって骨の強度(骨強度:骨密度と骨質が合わさったもの)が低下し、次第に骨が脆くなっていくことで骨折しやすくなる疾患を骨粗鬆症と言います。発症の原因はいくつかありますが、患者様に閉経後の女性や高齢者の方が多く見受けられるのが特徴です。

この場合、骨強度が低下していくことによる自覚症状はないとされ、人によっては腰や背中が痛むことはありますが、老化現象と思われることもよくあります。いずれにしても放置が続くと、背中や腰が丸くなる、背が低くなる、骨折しやすくなるといった症状が現れます。なお骨粗鬆症の患者様で折れやすい部位というのは、手首、背骨、大腿骨近位部(足の付け根の部分)といった箇所です。ちなみに大腿骨近位部が骨折すると、高齢者であれば寝たきりになることもあります。また背骨が脆弱化し、圧迫骨折が起き、前かがみの状態になると内蔵が圧迫を受けるので消化不良や便秘といった消化器症状がみられ、さらに心肺機能にも影響が及んで息苦しいなどの症状も現れることがあります。また骨折に気づかなくとも腰や背中などに痛みがみられ、日常生活にも支障をきたすようになるので、QoL(生活の質)も低下するようになります。

発症原因に関しては、原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症の2つに分けられます。原発性は病気など明らかな原因はなく発症するタイプで、主に閉経や加齢によって引き起こされると言われており、高齢女性の患者様が多いことでも知られています。なお全骨粗鬆症患者様の9割近くが、この原発性と言われています。一方続発性は、病気(糖尿病、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、骨形成不全症 など)や薬剤(ステロイド 等)、長期の寝たきりなどが原因となって発症するタイプです。

なお原発性、続発性に関係なく、骨粗鬆症を発症しやすい方は次の通りです。

  • 年齢が高めである
  • 女性である
  • 閉経が早い
  • 骨折を過去にしたことがある
  • ステロイド剤を長期投与している
  • 家族歴 など

検査について

骨粗鬆症が疑われる場合の診断をつけるための検査としては、脊椎のレントゲン撮影で骨折の有無を調べるというのもありますが、よく行われるのが骨密度検査です。ちなみに骨密度とは、単位体積あたりの骨の中のカルシウム量を言うのですが、これは骨の強さを判定する指標になります。

骨密度を測定する際はX線や超音波などを使用しての測定となります。診断基準についてですが、被検者の方が若い世代の方(20~44歳)の骨密度の平均値(YAM値)と比較して、70%以下の数値(脆弱性骨折がない場合)が確認された場合に骨粗しょう症と診断されます。なお骨密度検査は、種類がいくつかありますが、一般的に用いられるのがDEXA法と呼ばれる検査方法です。これは、高低2つの異なるエネルギーのX線を特定の部位(主に腰椎や大腿骨近位部)に照射することで測定していきます。その結果、YAM値が70%以下という場合は、さらに血液検査をして、原発性か続発性かを確認し、後者であれば原因に対する治療が行われます。

治療について

ここでは原発性骨粗鬆症に対する治療の説明をします。治療の目的は骨折を防ぐということです。そのためには普段の生活習慣の見直し、それと併行して薬物療法も行っていきます。

生活習慣の見直しで重要なのが食事面です。この場合、食事療法でカルシウムやカルシウムの吸収を促進させるビタミンDやビタミンKなどが多く含まれる食品を積極的に摂取します。また、骨強度を上げられるよう適度に骨に負荷をかけて丈夫にする、転倒を防止するための筋力や体幹を鍛えることも重要です。そのため運動も行うようにしてください。

それらに併行して薬物療法も行っていきます。具体的には、骨吸収を抑制する薬(ビスホスホネート、SERM など)、骨代謝を調整する薬(活性型ビタミンD3製剤)、骨経形成を促進させる薬(テリパラチド)などが用いられます。

このほかにも、禁煙の実践、日光浴によるビタミンDの合成、転倒やつまずきをしにくい環境を整えるといった改善策も行うようにします。

ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドロームのイメージ写真

当院ではロコモティブシンドロームの診療も行っています。担当するのは、日本整形外科学会が認定する整形外科専門医で、ロコモアドバイスドクター、ロコモサポートドクターでもある伊賀誠医師です。

そもそもロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)とは、運動器障害とも呼ばれるもので、主に加齢に伴って起きる運動器(骨、関節、筋肉 など)の障害によって移動機能(歩く、立つ、座るなど日常生活に必要な動作)が低下し、介護が必要となる、あるいは寝たきりになってしまっている状態のほか、将来的に要介護になるリスクが高いという場合も判定の対象になります。このロコモは、認知症やメタボリックシンドロームと併せて、健康寿命の短縮と寝たきり・要介護状態を招きやすい三大要因のひとつに数えられています。

背中が丸くなった、腰や膝に痛みやしびれがあるという場合は、ロコモを招きやすくするほか、運動習慣のない生活を続けている場合もリスクを高くさせますので要注意です。

ロコモティブシンドロームと診断される方の多くは、加齢による身体機能の衰えをきっかけとした、筋力、持久力、バランス能力の低下によるもののほか、運動不足も相まって起きる運動機能の低下による場合と、加齢に伴って引き起こされるいくつかの運動器疾患(骨粗しょう症、変形性関節症、関節リウマチ、脊柱管狭窄症 など)によって、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった部位で障害が起きることで、日常生活で必要とされる移動機能の低下がみられるという場合に分けられます。

なおロコモは、高齢者になってから起こる現象と考えている方もいるかもしれませんが、40代の5人に4人の方がロコモ予備軍であるとも言われています。そのため日頃から運動不足という方は、早めの予防対策も必要です。

ロコチェックについて

なお、ご自身がロコモティブシンドロームの可能性があるかどうか心配されている方は、日本整形外科学会のロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトの「ロコチェック」のページをご覧ください。そこにチェック項目が全部で7つ挙げられていますが、そのうちひとつでも該当する方については、ロコモもしくはその予備群と診断される可能性が高いです。気になる場合は、お気軽にご相談ください。

ロコチェック7項目

  • 片脚立ちで靴下がはけない
  • 家の中でつまずいたりすべったりする
  • 階段を上るのに手すりが必要である
  • 家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難
  • 2kg程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難
  • 15分くらい続けて歩くことができない
  • 横断歩道を青信号で渡りきれない

またロコチェックだけでなく、20~70代までの世代ごとのロコモの危険度を判定する方法として、「ロコモ度テスト」というのもあります。これも日本整形外科学会のロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト内にあるもので、「ロコモ度テスト」のページで確認できます。同ページでは、下肢筋力を調べる立ち上がりテスト、歩幅を調べる2ステップテスト、体の状態や生活状況を調べるロコモ25という3つのテストが掲載されています。これらのテストで1つでも該当する項目があるという場合は、ロコモティブシンドロームが疑われますので、一度当院をご受診されるようにしてください。

受診の結果、ロコモと診断された、またはその予備群と指摘された場合は、患者様の状態によって内容は異なりますが、多くは、筋力強化、歩行訓練、転倒しないためのバランス強化(体幹を鍛える)、歩行の安定性といった運動療法を中心に医師や理学療法士のサポートを受けながら日々行っていきます。また日々の生活習慣の見直しも併せて行っていきます。